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「買えません」
はっきりと冷たく断言されて「えぇ?」と呻く私。
「どうすればいい?」
「貴女は貴女のままでいいのかもしれません……身勝手な事をして申し訳ございませんでした」
「いいの……私も悪かったから」
柏原に抱きしめられる。
本当に困った執事。
こんなに優しく抱きしめられたら、毎朝同じ寝具で目を覚ますのも悪くないって思えちゃう。
「いいえ、私の責任です。貴女を孤独して追い詰めた。本当は自分がこれ以上孤独になるのが恐いだけなのに……」
押し潰されそうになるほど強く抱き締められ、私は柏原の広い背中に腕を回した。
「私だって恐い」
「私と貴女は身分が違う。ただそれ以前に、大切な存在を失う恐怖が大切な存在を作る事への恐怖に変わってしまっている……」
「でも、大丈夫よ。柏原
私たちこうして一緒にいるじゃない」
「この関係がいつまで続くかはわからない……貴女に相応しい男が現れれば身を引かなくてはならない」
「でも、私の執事は柏原だけよ!」
安心させてあげようと思ったのに、柏原は朝から盛大なため息をついた。
「執事ですか……」