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「ご注意くださいと……申し上げたのに」
ふっと吐くため息は、今度は私のうなじをくすぐる距離で生じる。
「ごめん……」
抱えられたまま上目使いで執事を見つめると、驚く程優しい眼差しが待っていた。
執事は
左手は私の右手を
右手は私の腰に回す。
「お嬢様のためにダンスのお相手でもいたしましょうか?」
流れるワルツの音楽
暖かい柏原の温もり。
今朝たっぷり堪能したのに、まだまだ触れ合っていたい。
高性能のスピーカーを通して生まれる音は、まるですぐ近くでオーケストラが演奏しているかのような臨場感がある。
クスリと微笑み。
曲に合わせたステップを踏む執事。
置いていかれまいと……私もステップを踏む。
「そうです。お上手です」
満足そうに笑う柏原は
存在自体が芸術作品のようなものだ。