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「これでも、人一倍忍耐強い方でございます。茉莉果様」
ギシッとスプリングが軋む音と共に、その執事は私の目の前で冷酷な笑みを浮かべた。
冷気というものは、確実に存在する。
黒い黒い冷気を放ちながら……私の執事は微笑んでいた。
黒いタイが宙を舞うと、私の両手に絡み付く。
「痛いわ!」
「申し訳ございません」
謝りながらも、私の両手の自由を奪う。
「何の真似?」
「その台詞、そのままお返ししましょう」
スッと私の頬をなぞる柏原の細い人差し指。
さっきまで食器を洗っていたから、すごく冷たい。
「私が、何をしたって言うの?」
ギュッとタイが絞られ、私の両手は完全拘束されてしまった……
「動けないじゃない!」
主人なのに、執事に組み敷かれた。
執事を押し返す……
「やめてよ!」
「やめません」