SWeeT†YeN




「これでも、人一倍忍耐強い方でございます。茉莉果様」


ギシッとスプリングが軋む音と共に、その執事は私の目の前で冷酷な笑みを浮かべた。



冷気というものは、確実に存在する。

黒い黒い冷気を放ちながら……私の執事は微笑んでいた。



黒いタイが宙を舞うと、私の両手に絡み付く。


「痛いわ!」


「申し訳ございません」


謝りながらも、私の両手の自由を奪う。



「何の真似?」

「その台詞、そのままお返ししましょう」


スッと私の頬をなぞる柏原の細い人差し指。
さっきまで食器を洗っていたから、すごく冷たい。




「私が、何をしたって言うの?」


ギュッとタイが絞られ、私の両手は完全拘束されてしまった……



「動けないじゃない!」


主人なのに、執事に組み敷かれた。


執事を押し返す……


「やめてよ!」


「やめません」






< 234 / 554 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop