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船は、沖に出て少しずつスピードを上げていく。
「この船は、120キロくらいスピードが出るんだよ」
「そうなんだ……」
「昼食も用意するから、デッキで食べようね?」
「うん……」
コアラと海の真ん中でランチ……、ユーカリかしら?
私は、葉っぱは食べられないわよ。
順調な航海でも、グラッと少し揺れる瞬間は必ずある。
どんなに天候が良くても波は必ずあるから仕方がない。
私は、窓の外を眺めようとした。
だけど……麗香が柏原に、抱きつくのが視界に入った。
「なっ! なにしてるのよ! 離れなさいよ麗香!」
「うるさいわね! いいでしょ!」
私は、柏原から麗香を引き離そうとソファーから立ち上がった。
だけど、不安定な床が恐くなって側にいた竜司にすがりつくような格好になってしまう。
「茉莉果は、竜司がいるでしょう? 私と柏原様邪魔しないでよ。ね? 柏原様」
「ええ」
麗香は、小悪魔みたに笑う。
柏原は麗香の髪を耳にかけた。
「なっ!? ななななn!?」
柏原は勝ち誇ったような笑みを浮かべると、麗香の髪を撫でる。
「麗香様、続きはあちらで……外野がうるさくてあなたに集中できない。さぁ参りましょう」
私の執事は麗香にだけ優しく微笑む。