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───爽やかな紅茶の香りに包まれると、いつも幸せな気分になれる。
その香りを運んでくれるのは、いつだって彼しかいない。
私の大切な執事。
いつの間にか眠っていたのね。
目を覚ますと、柏原がベッドサイドで心配そうに私を見つめている。
「お加減いかがでしょうか? 茉莉果様。だいぶ顔いろが良くなられましたね」
「ええ」
気遣いの優しい言葉。
労りの眼差し。
美しい執事。
良い気分だわ。目覚めには、柏原よね。
「薬をどうぞ、これを飲めばもっと気分が良くなりましょう」
「紅茶が飲みたいわ……」
「紅茶は、薬の作用を妨げる性質がございます。明日まで我慢してください」
「えーっ? 温まりたいのに……ホットティが飲みたいわ」
「では、温かいミネストローネをお作りいたしましょう」
「……いいわ。オニオン入れないでね」
「煮てしまえばわかりませんよ」
「わかるわよ! それにしても柏原がもっとはやく酔い止めくれていたら倒れる事なかったのに」
柏原は、水と薬を差し出し……眉をしかめる。
「竜司様が本日の予定を秘密にしていらしたので、慌てて用意した苦労を労ってはくださらないのですか?」
「イルカ見たかったのに」
「お嬢様、あの近海でのイルカの目撃事例はございません」
「えっ? じゃあ、竜司に騙されたのね!」
酷い!
イルカがいないなら、最初から船になんて乗らなかったわよ!