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「講堂までお願い」
「かしこまりました」
ハイヤーが走り出す。
私は棗先生に腕を絡めると先生は迷惑そうな顔をして窓の外をみた。
このツンツン加減がいいのよね~
余裕ある大人の魅力だわ~
この学園で男性職員は両手があれば数えられる程度しかいない。
だから棗先生はとても人気がある。
「紫音、さっき中嶋日菜と話てなかったか?」
先生は、私を「紫音」と呼び捨てにする。
他の先生なら、お父様か学園長に言い付けてクビを宣告させるわ。
「なかじまひな? 存じあげません」
「そうか、ならいい」
先生は柔かそうな髪をサラリと揺らし、鬱々とした様子で窓の外を眺めた。
ああ……
その鬱々感……
ちょっと柏原に似てるわ。
でも柏原はもっと美しいけど。
「棗先生って、おいくつですか?」
先生から放出される大人の色気みたいなものって柏原にも備わっているのよね。
でも、先生のほうが柏原より年上に見えるけどね。
「三十だよ。三十路。だけど他の生徒には言うなよ?」
「はい! 私と、棗先生だけの秘密ね」
三十歳。
未知の世界。
でも全然圏内よ。
「いや……そんな大げさな事でもない。紫音の執事さんは、いくつくらいなの?」
「さあ?」
だって、教えてくれないから。
「知らないのか?」
「はい。年齢は知らなくても……彼の素肌の温もりは知ってます」
柏原から放出される素肌の温もりと、ジャスミンの香り。
あれは最高よ。