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「茉莉果ちゃん! 僕の姫、君に会いたかったよ」

客間には、前世がコアラで発情期の竜司が来ていた。

その隣には、綺麗なお姉さんコアラが一匹ついている。


「突然の訪問、失礼だと思ったんだけど……善は急げだから」

発情期のせいで興奮する竜司。彼を軽く睨み付けてから私はソファに座る。


「柏原、説明しなさい」


紅茶をカートを運び、爽やかな香りを撒き散らす私の執事は無表情だ。


「私から、説明させていただきます。茉莉果お嬢様」


陽子さん
だから何回言わせるの?

私は、あなたが嫌いなのよ!!

それなのに、陽子さんはいけしゃあしゃあと話をはじめた。


「昨日、正式に西原家より婚約の申し立てを受けました。旦那様も奥様も、西原様とは予てよりご交流が深く……竜司様と茉莉果様の縁談を大変喜んでおられます」


「ようするに! 僕達の婚約を、茉莉果ちゃんのご両親とうちの両親が認めてくれたんだよ!」


「ふーん……」


こんにゃくね……


「ふーん、って茉莉果ちゃん……それだけ?」


竜司は、戸惑ったように中腰浮かせて止まった。

アハハ、コアラのくせに芸が細かいわね?


それに、今日は猿回しの猿並みに、おめかししてきたのね。

質の良さそうなグレーのジャケットに、ピカピカの革靴まで履いている。


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