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トロントしたお坊ちゃま
────空港でカシミアのカーディガンとダウンコートと、ブーツを竜司が買ってくれた。
「ね? 寒いでしょ?」と得意気にいう竜司。
本当に楽しそう。
他にも何枚か、着替えを買ってくれて「茉莉果ちゃんは、何を着せても可愛いね。買い物が楽しいよ」と笑っていた。
柏原も、すぐ近くで「お似合いです。お嬢様」と微笑んでくれているような錯覚がしたけど……何度振り返っても、その姿はなく。
私が、ため息をつくと竜司も辛そうに笑った。
私が、「はやく両親に会いたい」と言ったので、竜司は紙にくるまれたミートパイを買ってから直ぐに出発するという。
空港から一歩外に出ると…………
寒っ!
「春休みなのにどうしてこんなに寒いのかしら?」
私は、カナダに来たのは初めてだ。
柏原がいたら事前に冬支度を整えてくれただろうに、まさかこんなに寒いなんて想像できない。
「行こう。車を待たせてある」
熱々のミートパイ握りしめた私の肩を、竜司抱き寄せる。
初めて竜司の暖かさが有難いと思った。
「寒くない?」
竜司……
竜司は竜司で、私の事を考えてくれているんだわ。
だけど、竜司に優しくされると胸が罪悪感でいっぱいになるのよ……いつか柏原が、言っていた『騙しているのは、お嬢様のほうです』って
それは、事実なのかもしれない。
竜司には悪いけど、竜司は私の為に頑張ってくれているのよね。
「竜司、ごめん」
「え? なに?」
「ううん、なんでもない」
「竜司様、ようこそカナダへ」
流暢な日本語を話す赤毛の男が、竜司の荷物を受け取る。
「マイケル、久しぶり元気だった? 茉莉果ちゃん、うちの会社の、カナダ支社の支店長だよ」
ふーん……
カナダ寺社の四天王ね。
強そうじゃないの……
マイケルは、バスみたいに大きな車に軽々と荷物を積み込み。
終始ニコニコしている。
ずいぶん愛想のいい四天王ね?