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両親が滞在しているスイートルーム。
豪華な両開きの扉。最上階に一部屋しかない贅沢な作り。
大きな窓からは明るい日差しが差し込み、トロントの街並みが一望できる。
都会的で、あまり日本と変わらないけど……真っ直ぐな道が整備されいて公園がたくさんあるって聞いている。
「茉莉果ちゃん、あれがCNタワーだよ。あとで上ってみようか?」
竜司が指差す巨大なタワー。
普通のタワーじゃない。
大理石の暖炉の前には、本気の切り株が置かれている。
土から掘り起こされたばかりようで、生々しい根っこがついている。
どういう経緯で、この切り株はこのスイートルームに運ばれてきたんだろう?
「お父様! 私、柏原の事でお願いがあってきたのよ!」
目的は、タワーに上がりにきたわけでも……切り株に座りにきたわけでもない。
「ああ、柏原くんかぁ……」
お父様は、気まずそうにうつ向いた。
何故目線を反らすの?
お父様……
「お父さん! 柏原さんは、僕と茉莉果さんの結婚に賛同してくれました。西原の屋敷での働きぶりは素晴らしいです」
「そうだろう! 柏原くんは、頭がいいからなぁ」
「お父様!」
ダメよ!
柏原は私の一番近くにいるように命令してくれないとダメなのよ!
「茉莉果、一緒に年輪数えましょ? 五十八からよ?」
お母様の暢気な声。
「お母様、ごめんなさい」