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「柏原っ! 私のこと無視しないで!」
私は、我慢出来ずに後ろから執事に抱き着いた。
「茉莉果ちゃん!」
「まあ!」
爽やかなジャスミンの香り。
久々だわ……柏原の香り。
服は外の冷気を含んで冷たくなっている。
それが私を拒んでいるようで悲しくなった。
柏原は動かない、声も出さない。
程よく締まった体に、腕を回すとギュッと顔を埋めた。
もう離れないわよ!
寄生虫より、手強く
くっついてやるわ!
「茉莉果様……少し痩せられてしまいましたね。好き嫌いは、いけません」
困ったような柏原の声。
だけど、どんな小言だって今は嬉しくて嬉しくて……
だけど、私は簡単に柏原から引き離された。
「茉莉果様! 竜司様もいらしているのです。お控えください」
私達の間に入ったのは、陽子さんだった。
柏原しか見えてなかったわ!
まさか、この女も来ていたなんて……最悪。
「旦那様、奥様ただいま戻りました」
陽子さんも、まずはお父様とお母様に挨拶をする。
それから竜司が座る切り株を見て、眉をしかめた。
「奥様……また私がいない間にこんなものを?」とお母様を非難している。
お母様は、「ほほほ、素敵でしょう?」と笑った。
その隙に私はまた柏原にしがみついた。