SWeeT†YeN
「お嬢様、手を離してください」
「いやよ」
「柏原くん! 君を待っていたんだよ! ついに"あれ"をやる日が来た!」
お父様は、柏原に歩みよる。
「頼んだぞ? 竜司くんが茉莉果の婚約者に相応しいか、私に教えてくれ」と肩を二回たたく。
「お待たせして申し訳ございません。旦那様、本当に"あれ"をやるのですか?」
「もちろん、私は茉莉果の結婚相手は君が判断してくれると信じている。誰より茉莉果の近くにいた君が……」
私の?
結婚相手を決める?
柏原以外、その場にいた全員が疑問点をいくつも抱えていた。
「お父さん! それはどういう事ですか? 大切な茉莉果さんの結婚を、使用人ごときに?」
竜司が切り株から勢いよく立ち上がり、柏原を睨みつける。
私は、柏原の腕に自分の腕を絡めて……柏原の顔色を伺ってみたけど、全くの無表情だ。
「ああ……我が家で決めた事だが、君にも付き合ってもらうよ? 竜司くん。プロジェクトMだ。茉莉果と婚約をする男は、まず柏原くんを倒してもらわないとならない」
プロジェクトM?
前に……どこかで聞いた事がある単語ね。
あの時は……プロジェクターMだったかしら?
それより、柏原を倒すって?
それなら勝負見えてるわね?
柏原は、サイボーグみたいだから簡単には倒せないはずよ。
「お父さん! それはどういうプロジェクトですか?」
竜司は、果敢に質問する度に右手をビシッと高くあげる。
「"プロジェクトM"の"M"は、茉莉果(Marica)と結婚(Marriage)の意味だ! 中々センスがいいだろ?」
お父様が意気揚々と答えると……
「素敵よ~」と切り株の上から、お母様が拍手を送る。