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「いいだろう。隣はピアノがある防音室だ。そこを使いなさい」
お父様は左側の扉を指さした。
お母様は、「面白くなってきたわ!」と両手を叩いた。
「ありがとうございます。旦那様」
慈しみを持った一礼。
柏原は、いつか『ご恩に報いるために……』と話していた時がある。
本当に、お父様に忠誠を誓っているのね?
両親を亡くし、お父様が柏原を救った。
それならば、これからは私が柏原を支えるわ……
顔を上げると柏原は私の手をとる。
不覚にも、ドキンと胸が鳴る。
数日離れて免疫が落ちているんだわ……柏原に、こんなに胸が高鳴るなんて
「さぁ、茉莉果様こちらへ」
私は吸い込まれるように執事についていく。
「僕の茉莉果ちゃんが……」