SWeeT†YeN


「いいだろう。隣はピアノがある防音室だ。そこを使いなさい」

お父様は左側の扉を指さした。


お母様は、「面白くなってきたわ!」と両手を叩いた。



「ありがとうございます。旦那様」


慈しみを持った一礼。
柏原は、いつか『ご恩に報いるために……』と話していた時がある。

本当に、お父様に忠誠を誓っているのね?

両親を亡くし、お父様が柏原を救った。



それならば、これからは私が柏原を支えるわ……

顔を上げると柏原は私の手をとる。


不覚にも、ドキンと胸が鳴る。

数日離れて免疫が落ちているんだわ……柏原に、こんなに胸が高鳴るなんて


「さぁ、茉莉果様こちらへ」

私は吸い込まれるように執事についていく。



「僕の茉莉果ちゃんが……」


< 313 / 554 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop