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少し会えないだけで、こんなにも自分が壊れてしまうなんて……


『狂おしい程、愛しい』
今なら、その意味がよく理解できる。


「柏原、愛してる。私やっと気がついた……柏原のこと使用人とも執事とも思ってない。私、柏原のこと凄く愛してる」



「本当にそうでございましょうか? お嬢様」


冷静すぎるほど、冷静な柏原の声。
清んだ水のようにクリアで透明な囁き。



「本当って……私が嘘ついてるとでも言いたいの? 絶対勝ちなさいよ! 柏原」



「本当にそれでよろしいのですか?

私は西原家に仕えご当主にもお会いいたしました。
とても素晴らしい方です。気品があり優しく人情味のある方だ。竜司様も、お嬢様好みの"イケメン"ではないのですか?」


柏原の、落ち着き払った発言。

かなり客観的だ。

何故、そんなに冷静でいられるの?



「陽子さんの、おっしゃるとおりです。この縁談は、復と無い善き話でございましょう」


「それでも、貴方は私といたいと願ってくれるでしょう?
愛してるっていってくれたわよね!?」


竜司は、柏原を解雇するかもしれない。
名前を出しただけで、嫌な顔をしていたから……



だけど、柏原は余裕の笑みを見せる。



「そうですね。もしこの話がまとまれば、間違いなく私はお嬢様の執事ではいられなくなります。

ですが、竜司様とお嬢様が二人で仲良くカナダまで来られたではありませんか? 私の出る幕はございません。竜司様から細やかな報告を受けておりました。貴女は、難なくここまで辿り着けた」


柏原は携帯電話を取り出すと、空港で竜司が撮ったツーショット写真を表示させた。
竜司……柏原にメールしていたのね?


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