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「よく、ご存じで……」
「知っているわよ。
馬鹿にしないで頂戴」
柏原の事なら、なんでも知っている。
私から執事に歩み寄る。
呼べばいつも来てくれるのが執事だけど……
その真っ黒な燕尾服を乱暴に扉に押しつけた。
油断していたのかドカッとすごい音がした。
……私は遠慮なくその綺麗に唇に自分の唇を重ねた。
背伸びして黒くてしなやかな髪に触れた、それから頬に指を滑らせる。
綺麗……本当に柏原は綺麗。
でもこの顔だけじゃない。
こんなに性格悪そうでも、私は柏原を愛してる。
もう一度口づけを……
柏原が私への愛情を思い出してくれるまで何度もキスしてやるわ。
「後戻りが、できなくなります。貴女はどこまで私を苦しめるのですか?」
手を掴まれた。
一瞬で景色が反転すると今度は私が扉に押し付けられた。
優しい拘束。
「もうとっくにできないわよ……柏原
狂って……私を奪って」
そして貴方からのキスは
美しく……
切なく……
甘かった。