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ロビーは先程より混雑していて、色んな人がいる。

私は、コンシェルジュにブーツを履かしてもらうと、急いで柏原の黒髪を見失わないように睨みつけた。

チップがなかったので、ポケットに入っていたハーブキャンディを、コンシェルジュに手渡すと

彼はカナダ語で「サンキューベリーマッチ」と言っていた。


自動ドアを二枚越えると、凍てつく寒さに震えあがる。


コートを置いてきちゃったわ……

でも、部屋に戻っている時間はない。


こうしている間にも、執事の黒髪はどんどん見えなくなってしまう。







「柏原! 待ちなさい!」



無視だわ。
執事じゃない柏原って厄介な代物なのね……



「お願い! 柏原待って……ハァハァ……」




体中の筋肉が悲鳴をあげている。


酷いものだ。

仮にも、数分前までは主人だった私にこんな態度を見せるなんて……


貴方の忠誠心なんて
その程度のものだったのね。





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