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カナダから戻ってきてから
まるで恋人同士のような私達だけれど……
主人と執事。
それが、私達の関係だ。
柏原が、シルバーのナイフでタルトを綺麗に切り分けていく。
甘酸っぱい香りが立ち込めて、私は執事と香りに酔わされているみたいだ。
「食べさせて、柏原」
「困った人だ。カナダから戻られたお嬢様は、酷く甘え上手になられてしまった」
ため息を吐きながらも、柏原は丁寧にタルトを一口フォークにのせる。
小さく口を開くと、執事は綺麗な笑みを浮かべてタルトを運び入れてくれた。
一口食べると甘酸っぱい味が広がり、私の幸せに拍車がかかる。
「美味しい~」
「それは良かった。張り切って準備した甲斐があります」
嬉しくて楽しくて執事とこんな毎日が過ごせる私はなんて幸せな者なんだろう。
今の私、ちっとも寂しくなんてない。
ちょっと前の私は柏原がこんなに大切な存在だったなんて全然気がついていなかった。
「お譲様、クリームが口についておりますよ」
甘い……
甘過ぎてぶくぶく太っていきそうだわ……
それでも柏原は
私を慕い続けるのね?
反対に柏原がぶくぶく太ってしまったら、どうしよう?
それでも私は……彼を
ゔーん゙
ぶくぶく執事……
嫌よ、丸焼きにしたくなっちゃうわ……無理よ。
私には、無理だわ!