SWeeT†YeN



ゆっくりと顔を上げる。

すると、私の執事が……美しく微笑んでいる。



恐ろしい程、美しく。


笑ってはいても……その視線は凍てつくような冷たさを放ちながら……



「柏原……」


「邪魔するな、使用人」


ピチャッと水音が響く。

柏原は表情を変えずに、戸棚からバスタオルを二枚出す。


「お楽しみの所、申し訳ございません。タオルは此方にご用意しておきます。失礼しました」


一礼をすると、そのまま去ってゆく執事。



え? それだけ?



「待って! 柏原っ」



慌てて柏原を追いかけようとすると、後ろから肩を掴まれて竜司に抱き寄せられた。


「茉莉果ちゃん、体をふかないと風邪ひくよ」



竜司が耳元で囁く。


申し訳ないけど……
あなたには、セルマン先生がいるでしょ?


私には柏原しかいないのよ!



……あんなに冷たい目を向けられたのは初めてだわ




いや、いつもかしら?


違う……いつもとは少しタイプの違う睨み方だった。

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