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 衣装選びはすぐに終わり、支度が整う。

 私達は再び柏原が待つ車に戻った。

 
 車に乗り込む時に柏原に小声で「このワンピース可愛い?」 と聞いたら「そのような事は彼に聞いてみては、いかがでしょう」 と言われた。


 私の衣装の良し悪しを語るのは執事の仕事なのに、職務怠慢ね。


「ナツ、このワンピースどう思う?」

 
 ナツは、私を遠慮がちに眺めてから「似合ってるんじゃない」と小さく呟く。


 うっ……嬉しいわ。
 
 柏原に「素敵ですよお嬢様」と言われるのも嬉しいけど、柏原以外の男性には初めて言われた。


「ありがとう」


 こんなに素直な気持ちで、お礼を言うのは久しぶり。

 いつも『ごくろうさま』という意味を込めた『ありがとう』ばかりを言っている。


 新鮮ね……こんな気持ち。THE青春! 噛みしめなくちゃ!

 恋って素晴らしいわ。

 彼の一言でこんなにも満たされ気持ちになれる。



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