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すると、柏原は受話器を兄貴に手渡し
私をエスコートするように、キッチンからティールームに移動する。


「勝手に動くなっ! 撃ち殺すぞっ」


「どうぞ、ご自由に」


私をソファーに座らせてから柏原も長い足を組みソファーにもたれ掛かる。


「あの銃は偽物です。大丈夫ですよ。痛いところなど、ございませんか?」

そして小声で囁く

「大丈夫よ……それより柏原の頬が……」


氷で冷した方が良さそうだわ、あとに残ったらどうしてくれんのよ!

美形執事じゃなくなっちゃうわよ!


だけど……頬が少し腫れた柏原も、それはそれで色気があった。

乱れた黒髪も中々素敵で、はだけた胸元と、血でほんのりと湿った唇は殺人的なフェロモンが放出されている。





「やべぇーよ……」
「どうしよう……」


震えている、不細工ひげ面達が何だか不憫だ。

少しでいいから、柏原のような美貌を兼ね備えて産まれてきたらよかったのにね?




「なんで、あの人達怯えているの?」

柏原に小声で質問する。


「何故、貴女が怯えていないのかが一番不思議だ」

すると冷たく返された。



なっ……何様!?


さっきまで心配そうな顔をしていたのに、突然何よ!

フンっと、そっぽ向く執事。沸々と怒りが込み上げてくる。


「何よ! わかんないんだから教えてくれたっていいじゃないっ!」


私は、柏原の胸元を引っ張りグングン揺すった。


「本当に、手のかかる女だ……おまえは"この家から出てけ"とさっき言っただろ?」



ギャッ!?

柏原……貴方の忠誠心は完璧に崩壊したのね?


この私に、そんな態度をするなんてっ!




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