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 静かな車内、柔らかい皮張りのシートに身を沈める。柏原の運転は、ゆりかごに揺られてるみたいに滑らかだ。



 車内のスピーカーからは、お母様の演奏するピアノの音色が流れている。

 私の両親は、お父様が有名な作曲家。
お母様も有名なピアニスト。

 お父様の作った曲をお母様が奏でる。
その音楽は世界中の人々を魅了する美しい調となる。とても人気があるのよ。


 だから、両親は一年の三分のニ以上は世界を演奏旅行で回っているわ。

 兄弟のいない私は、一人日本に残りこの屋敷で生活をしている。



 柏原と初めて会ったのは中学生の時。それまでは、両親に代わりおばあ様と使用人が私と一緒に暮らしていた。

 けれども、おばあ様が亡くなり、使用人も高齢を理由に屋敷を去り……お父様は、どこからか柏原を連れてきた。


「年が近い方が茉莉果も心を許すだろう?」と紹介されたけど、当時柏原の正確な年齢は知らない。


 その完璧な容姿や、話し方から彼には謎ばかり。

 出身地、誕生日や血液型も私は知らない。


 柏原を知りたくて、何度か質問した事もあるけれど『お嬢様に仕えるために、必要ない情報です』の一点張りで教えてくれないのだった。




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