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「いい加減にしなさいっ! 柏原」
何故、私は執事に縛られなきゃいけないのだろう。
満足そうな顔をした執事は、ゆっくりと私の前に立つと少しタイを緩めた。
「その言葉、そっくり貴女にお返しいたします。茉莉果様」
「なによっ? なんなのよっ!」
ふん。
こんな縄、余裕で解いてやるわ。さっき柏原も、ひげ面に縛られた縄を解いていたから、私にも余裕よね?
んっ?
んんっ?
あれ全然動かない!
背中に感じる、柱の冷たさ
そして執事の冷たい目線
「指一本動かせないでしょう? お嬢様、貴女は精神力の強い方だ。あれ程の恐怖に対面して……尚、私に縛られても、その気高い眼差しは、力を失わない」
柏原……
私は、強いわけじゃない。さっきだって、どうしていいのか迷っていた。
「柏原……縄をほどいて」
「おや? 今度は可愛らしい声を出されるのですか……全く恐ろしい小娘だ」