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だけど、しばらく歩くと私は柏原の燕尾服の裾をギュッと握りしめていた。


だって……


ここは、本当に広い迷路みたいだ。しかも建物全体が白で統一されているから余計に、自分がどこにいるのか分からないように錯覚する。



「柏原……この壁に落書きしたくなってきたわ……」

「絶対にお止めください」



私は、真っ白な壁に大輪の花を描くイメージをした。
絶対楽しそうなのに……

蝶々も飛んだら、最高ね?



「茉莉果さんと話をさせていただく医師は、僕の兄貴なんですよ」


津田さんが、突然とんでもない事を言った。


「さようでございますか。ご兄弟で警察機関にお勤めなされているとは、とても優秀なのですね」


「実は、父も警官です。ははは……父は、定年まで交番勤務でしたけどね」



お父様まで?


ちょっと……柏原、愛想笑いしてる場合じゃないわよ?


私が、津田さんのご家族に紹介される……って意味がわかってるのかしら?

家族ぐるみでお付き合いしたいってことなのね?






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