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大海原とお嬢様の記憶
────コブタちゃんは、意外と優しい豚だった。
曲線のホルムが美しい皮のリクライニングチェアに、私を座らせてくれた。
私がアロマの香りが好きだと伝えたら、即座にラベンダーのアロマを焚いてくれた。
「君は、高校生? ご両親は?」
「お父様とお母様は、忙しいのよ。私に構っている暇はないわ」
「そうか……寂しくはない?」
コブタは、机に紙とペンを用意しているけど何かを書き留めるつもりはないらしく、脂ぎった手を、膨らんだお腹の上で組んでいる。
なんだか、眠くなってきたわ……
コブタちゃんの子守唄のような優しい声と、加湿器から焚かれるアロマの香り。
隣の部屋では、柏原が待っていてくれている。
「執事がいるから、大丈夫よ」
眠い……
眠くなってきちゃったわ……