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部屋のドアが閉まると、真っ白なカバーのかけられたベッドに倒れこむ。
屋敷のベッドより一回り小さなベット。
ふかふかの羽毛が使われていて寝心地は良さそう。誰にも使われていなかったのか、ちょっと埃っぽい。
「…………お嬢様」
私、もうお嬢様なんかじゃないわ。
これからどうやって生きていけばいいのかしら……
「……茉莉果お嬢様、一人で泣いておられるのですか? 酷く哀れなお姿ですね」
あれ?
私は、今部屋に一人よね?
柏原の性格の悪そうな声が、聞こえたような気がする。
部屋のカーテンがふわりと揺れる。
あら、窓を閉め忘れているわ。
すると、カーテンの下から漆黒の皮靴がスッと現れフローリングの床を確かめる。
次に……
漆黒の燕尾服が見えた。
上質のシルクで作られた、漆黒の燕尾服。
そして、彼は誰よりもその服が似合うのだ。
優しい笑みを浮かべて、私だけの執事。
目眩がしそうな程に、美しくて……ちょっと性格は悪いけど、誰よりも傍にいてくれる。
「不法侵入をしてしまいました。気が重い」
「……かしわばらっ!?」
「お静かに……」
柏原は、人指し指を唇の前で立てると、得意気に微笑み。
私が頷いたのを確認してから、部屋の照明を落とした。