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柏原が来てくれた!
嬉しい……。
足音なくベッドに踞る私の前にやってくる執事。片膝をついて頭を深く下げた。
「お迎えに参りました。お嬢様」
「おっ……遅かったじゃない……もう!」
涙をゴシゴシと拭きながら、執事を咎めるように最大限に強がってみせた。
本当は、今すぐ飛び付きたいくらいに、嬉しくて嬉しくて……
心臓がドキドキと早鐘を打つ。
「お待たせしてしまって、申し訳ございません。慎重な性格ですので、警備の者に見つからぬよう用心してまいりました」
柏原は立ち上がると手早く鞄を持ち上げ、右手を私に差し出した。
「柏原?」
「絶対に騒がないと約束してください。どうせなら完全犯罪といきたいものです」
「えっ? 完全犯罪って……わっ!? ん!?」
なっ!?
執事は、苛立ったように眉間を皺を寄せると漆黒のタイを解いて瞬時に私の両手を拘束した。
「貴女に、拒否権はございません。これは誘拐ですから」