SWeeT†YeN
ここへ来た日に買ってもらったルームシューズに足を入れた。
おかげで冷たい床の上でも快適に過ごしている。
伸びをして、首をくるりと回す。
それから、また執事を見つめた。
顔にかかる黒髪が、綺麗な横顔を隠している。
私は、暇なのよ 。
相手しなさいよ。
念力を送ってみても、柏原は本に視線を定めたまま。
「はぁ……」
この執事。
本当に、取り扱いが難しいわね。
「愛してる」とか「お嬢様の傍におります」とか平気な顔して囁くクセに、本に夢中になると私を放置する癖があったなんて……。
「うぉっほん!」
私の咳払いで、柏原が顔を上げた。
「気が散るのでいい加減にしてください。お嬢様も、本を読まれてみてはいかがですか?」
それは、嫌味よね……。どS執事……。
私、暇なのよ!
この家には私が読める文字(フリガナつきの日本語)で書かれた本なんてないじゃない。