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本当だ。

私、久しぶりにその名前を口にした。


「茉莉果お嬢様、ご自分の本当の名前は思い出されてはいないのですか?」


柏原は、皮肉めいたように質問を投げる。

鉈を振り下ろすと、気持ちいいくらいに薪が真っ二つに割れた。


「思い出せないのよ」

割れたばかりの薪を運んで屋根の下に積む。


名前だけじゃないわ、本当の両親の顔も思い出せない。


「私、どっちの両親にも親不孝な娘よね。それなのに、柏原に甘やかされて……本物の茉莉果ちゃんが怒っている気がするわ」

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