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さよなら執事様
────カーブの多い首都高速は、絶好調に渋滞していた。
迫り来る灰色のビルが懐かしい。
のろのろと進み、首都高速から脱出して見慣れた道を走る。
私と柏原は、一言も口をきかなかった。
ひょっとしたら、同じことを考えていたのかもしれないし……全く別のことを考えていたのかもしれない。
「おかえりなさいませ。茉莉果お嬢様、屋敷に到着いたしました」
大きな門をくぐり、レンガ道を少し上がるとメインエントランスのロータリーに車を横付けする。
エントランスのガス灯は、明々と灯火を宿している。
「誰かいるかしら?」
「ええ、どうでしょう……」