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反逆の執事様
「────茉莉果様、お茶の準備ができました」
「ありがと」
屋敷に戻り。静かなリビングでお母様のピアノの音を流す。
お父様が贈った音を、お母様は大切に奏でることができる。
いつ聴いても綺麗な曲。愛が沢山詰まっているのね。
お父様とお母様は、いつだって二人一緒に音楽活動をしている。
私は、この広い屋敷にただ一人でCDを聞くだけだ。
「今夜は、甘いミルクティーをお持ちいたしました。お身体を冷やさないようジンジャーを少々入れてあります」
曲の邪魔にならない柏原の流暢なバリトンボイスは、耳元で囁かれているような独自のセンテンス。
まるでこれも曲の一部だと思わせるような、優雅な動きで私に白磁のカップとソーサを差し出した。
さっきナツと一緒に飲んだ紅茶とは違う、深みのある味わい。
清んだ茶葉の味と、柏原の配慮でジンジャーがブレンドされ喉にしっくりと馴染む。
白磁のカップも持ちやすく洗礼されて、紅茶を引き立てるには最適だ。