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「この道は、Uターン禁止です」
無機質なロボットのように冷酷な音色だわ。
「柏原っ! 交通ルールと私、どっちが大切なの?」
貴方は、執事でしょ。
主人である私がルールよ。
柏原は更に盛大な溜め息を吐きながら、彼を追う素振りは見せない。
「私には、どちらも大切でございますよ」
「だったら、あの男の子追ってよ! すっごい久々の超イケメンなのに!」
「個人的にお嬢様の『超』という言葉使いは好きではありません、社交の場でそのような言葉が出ぬよう日頃から鍛練されますよう……お願い申し上げます」
「ああっ! 見えなくなっちゃったじゃないっ!」
柏原は、容赦なく私の意思とは反対方向へのアクセルを強めた。
「柏原のバカっ! アホっ! マヌケっ! 石頭!」
今日三度目の溜め息を吐き出すと、ルームミラーから私を鋭く睨みつけてきた。
「茉莉果様、私はあなたのお父様に『娘に悪い虫が付かぬよう、確りと見張っていてくれ』と命を受けているのです。軽率な行動は控えて下さい」
軽率なんて……それじゃ、まるで私が何も考えていない人みたいじゃない。
失礼な事言わないでよ!
そっちこそ軽率よ。