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「失礼いたします。ナツ様が貴女の魅力に気付く前に、私も手を打たないとなりませんね……」
柏原はグッと私の両腕を頭の上に一纏めに押さえつける。
しかも、すごい力で……
「ちょっ……待ちなさい! 執事の分際で主人に馬乗りになるってどーいうつもりよっ!」
柏原は、くっ、と笑うと一切表情の読めない顔になった。
何考えているのよっ!
「男は、貴女のような気高い女性を泣かせてみたいと思うものです。茉莉果お嬢様」
何を言ってるの?
少し長めの黒髪が柏原の顔にかかると影がさす。
ゆっくりと私に迫る顔が……なんて綺麗…………。
黒髪から美しく鋭い視線が射抜いてくる。金縛りにあったように抵抗をやめた。
「私は、こんな事くらいでは泣かないわ。残念ね? どいてちょうだい」
私は、貴方の主人よ。
こんな事は間違っているし、私は動じない。
しっかりと態度で示さなきゃ……
柏原はその言葉で更に力を強めると私の腕は強く拘束されてソファーに沈み込んでゆく。
「当然です。まだ何もしていません。これくらいで泣かれては、つまらない…………これからですよ、お嬢様」
柏原は吐き捨てるように乱暴な態度で、給仕用の白い手袋を口先に加えるとサッと脱ぎ捨てた。