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「────茉莉果様どうぞ、こちらへ」


 都内某所の某有名名門ホテルのエントランスを、柏原のエスコートでパーティー会場へと向かう私。


 柏原が選んでくれたオートクチュールのカクテルドレスに身を包んだ。

 白地にパステルピンクのリボンが沢山ついている珍しいデザインよ。

 膝丈のスカート裾には、小さなリボンがいくつも縫い付けられていて、お伽の国の親指姫になったような気分になれるドレスだ。

 私は、こういうメルヘンチックなドレスが大好きで柏原も『とてもよくお似合いです』と誉めてくれる。

 柏原も、今日はいつもより少しお洒落をしている。

 と、言っても彼は頑なに燕尾服を脱ごうとはしなかったので……ワイシャツの袖からオニキスのカフスが控え目に見え隠れしている事と、光沢のあるストライプシルバーのタイを締めている事と、真っ黒なストレートの髪の毛先を遊ばせている事がいつも少し違う。


 だけど、それでも普段とはまた違う印象を受ける。


 こんなちょっとお洒落をしただけで、その端麗な容姿はいつも以上に人の目を惹き付け「まぁ……」とか「素敵……」などと貴婦人からの熱い眼差しを独占している。

 
 ホテルのロビーでは、足を止めて柏原に見とれている婦人までいる。

 見るだけなら無料よ。

 存分に見るがいいわ。

 でも、私の執事だけどね。


 残念ながら、柏原は私のいうことしか聞く耳もたないよのねー。残念ながら、私レベルの女じゃないと、柏原みたいな執事を連れて歩けないのよ。ふふふ。








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