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「柏原、私に子供が出来たら厳しく育てるわ」
それが子供の為ね。
私とナツの子供なら世にも類を見ない程の美形が産まれてくるに違いない。
でもナツみたいなワガママに育ったら周りの人に迷惑をかけてしまうから……私がしっかりと教育しなくてはならないわね!
柏原は前を見据えたまま、綺麗なアーチを描く眉を一文字にしかめた。
「どのような経緯で、子育てについてそのような考えにたどり着いたのかは全く理解しかねますが……私には貴女ほど甘やかされて育った人は見たことがございません」
「柏原は頷いていればいいのよ!」
なによ、また反論してきたわ!
この執事、本当に困った執事ね。
柏原も無駄に整った容姿をしているから、きっと甘やかされて育ってしまったナツ側の人間ね。
「大変失礼いたしました」
私は、絶対にナツや柏原みたいには育てないわよ。
「ああ、でも、まず作り方の勉強をしないといけないわね……柏原。ナツに聞いてみようかしら?」
正直、検討もつかないわ。
「おやめください」
執事は、更に眉をしかめると進んでいく。
会場に近づくと、甘くむせかえる様なフローラルの香りが漂う。
『REIKA HappyBirthday』と悪趣味に書かた巨大なウェルカムボードに、生花のカサブランカが縁を飾っていた。
「柏原! 私は、この看板が倒れてきて頭打って死ぬのだけは絶対に嫌よ」
「かしこまりました茉莉果様」
柏原は言われた通りに、頭上にそびえる強敵のように看板の落下位置を確認しながら、そこを避け私をエスコートする。