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浩輔の品良く甘い香水の匂いで包まれる。

視界の隅で柏原がこっちに向かってきていた。


執事は香水は禁止よ?
学校で習わなかったのかしら?


手が離れると、彼の薄い唇が……


「お嬢様っ!」
「茉莉果っ!」


柏原の声と、麗香の声が重なった。
柏原は痛いくらいに私を強引に抱き寄せる。


「痛いわよ!」


「お嬢様! ご自分が何をされてるのか理解されているのですか!」


「いいじゃない。口出さないで!」


麗香が鬼の形相でピンヒールをカツカツ鳴らしながら回路を走ってきた。

浩輔に執事としての教育してあげようと思っていたのに、あまりに浩輔がカッコいいから見とれちゃっただけよ。

でも、やっぱり教育は柏原に任せるべきかしら。


「茉莉果ってば! 人の男盗らないでよ! 浩輔くんも浩輔くんよ! 麗香のバースデーパーティーに来てくれんじゃないの?」


浩輔は、人懐こいニコニコ笑いを浮かべる。


「もちろんだよ。ただ麗香ちゃんが忙しそうだったから、友達の茉莉果ちゃんと話していただけだよ? 他に知り合いがいないから」


その一言は、すごく正しかった。別に彼は麗香に責められるような事は何もしていないし、知り合いがいない同士時間を潰すのは悪い事じゃない。

それに、彼は執事になりたいのだから私と話をしたい気持ちはよく理解できる。


浩輔が「ごめんね」と麗香の耳元で囁くと、あのヒステリックの原石みたいな麗香が、ふにゃりと表情を緩める。


すごいわね!

ひょっとしたら浩輔は凄い逸材なのかもしれない。


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