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松脂の香りがするヴァイオリンを握ると、吐き気が……
って事もなく音楽を旅するような長い長いレッスンの旅路が始まった。
お父様が、ウィーンの技士に特注で造らせた大切なヴァイオリンは、しっくりと嫌味なくらいに私の体に馴染んでいる。
そしてレッスンは、かつては舞踏会なども開かれていたという屋敷の大広間で行われている。
お母様の珍しいブラウンのグランドピアノも置いてある。たまに日本に帰国した際にリサイタルなどの簡単な演奏会もする。
毎月のように柏原が、調律師を呼び常に寸分の狂いもなく美しい音色が奏でられるように置かれているピアノも持ち主がいないと寂しそう。