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「ずいぶん可愛らしい声が出せるようになられたのですね。茉莉果様」


柏原は不安定な体制の私をあまり支えようとはしない。


「きゃっ……ちょっと! 性悪執事ー!」


ちゃんと支えなさいよっ!

柏原は、ソファーに深く腰をかけているからいいかもしれないけど、私は落ちたら大理石のローテーブルに転落だ。

そんなの、絶対に嫌だから悔しいけど私から抱き着く様な形になった。


柏原の首に腕を回す。

すると予想外にも、柏原の腕が私を優しく抱き締め返してくれた。


なによ、この感触……
鼻腔をくすぐるのは、ジャスミンの香り。


香水とは違う自然な香りは、アロマオイルを焚き柏原自身に染み込まれた香り。

主人の不快にならぬように、執事はいつも爽やかで清潔な香りでいなくてはならないからね。



そういえば昔、風邪をひいた時や夜眠れない時……両親に会えなくて寂しい時は、柏原に優しく抱き締めてもらっていたんだ。

柏原の暖かい手で、優しく背中を撫でられると落ち着いて眠りについた記憶がある。最近は、そんな事もなくなったけどいつも一番近くにいてくれたのは柏原だけだ。






「知らない男に奪われるくらいなら、私がこの手で貴女の全てを奪いたい……」



柏原──


貴方はあの頃と何もかわらず今もその手は優しく私だけを包んでくれているのね





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