BLack†NOBLE
『俺は執事だ』
『執事ぃ? うきゃあっ! そこ左っ!』
『わかった。左だな?』
直進すると見せ掛け、大振りのハンドル捌きで方向転換する。
さすがのランボルギーニでも、後ろのタイヤがスリップする。
ハンドルを持っていかれないよう、両手で強く握り締めて……再度加速させていく。
此方の思惑通りに、数台がハンドルをきれずに雑木林に突っ込んだ。
『瑠威……すごい……日本の執事って、こんな事もできるんだ……』
今の反撃で、追っ手に動揺がみられる。距離が少し開いたな。
『主(アルジ)の安全と快適性を考慮した運転を心掛けている』
『いやぁー! 今も心掛けてぇ~スピードメーター振りきってるしーっ!』
カーブの手前でブレーキを使い、スピンしたように見せ掛け方向転換。
林に突っ込んでいく車のテールランプだけがバックミラーで確認できる。
林の先が、崖じゃないことを祈ろうか……
死人が出ていないといいな。厄介事は御免だ。
『執事は、主を最も適切なルートで最短時間で目的地にお連れする』
アリシアは、大きく首を縦に振った。