BLack†NOBLE
食事を済ませると、外は幻想的で美しい夕景に包まれていた。
「お嬢様、少しクルーズ船に乗りますが大丈夫ですか?」
船が苦手な彼女を、こんな海洋都市に連れてきてしまった後悔。
「大丈夫よ。柏原が隣にいてくれたら、大丈夫だって、さっき気がついたわ」
彼女がそれを苦手とする理由がメンタル面にあり、俺を頼ってくれるのはこの上なく光栄なことだと後悔が薄れる。
夜風が冷たく、白いドレスにコートを着せてストールを巻いた彼女を抱き寄せた。
今夜の宿泊地は、ムラーノ島。ベニス本島の北部に位置する。クルーズ船を使えば、数十分の移動時間だ。
ムラーノは、マエストロ(職人)が生み出したベネチアンガラスの本場だ。