BLack†NOBLE
8.otto
アリシアを隣に乗せて、深夜のローマを走り抜ける。
この時間でなければ、観光バスの渋滞ができているだろう。
世界遺産の四割がイタリアにある、それに一度はお目かかりたいと考える人間が押し掛けてくる。当然のことだ。
俺と蔵人も、家族で色々な観光名所に訪れた。美術館、教会、大聖堂、劇場……
父の説明は教科書よりも丁寧で長く、幼い頃はその価値もわからずに母に露天で買ってもらったジェラードの味のほうがよく覚えている。
『クロードの子供の頃ってどんな子だったの? やっぱ天使みたいに可愛かった?』
『チッ……』
『舌打ち? はぁ? 感じ悪い~。瑠威、女にモテないでしょ?』
ローマの街並みを見ながら微睡んでいたアリシアは、眠そうな声をだす。
『おまえは、寝てろ』
『寝たら車から突き落とすでしょ? そんな性格だと、彼女できないよ。せっかく顔はクロード似でカッコいいのに、もったいない』
アリシアはフンと鼻を鳴らして、少しシートを倒してから窓の外を眺めた。
『蔵人のどこがいいんだ? あんな奴の……』