BLack†NOBLE
目の前に、巨大な建造物がそびえ立つ。
コロッセオ……
夜はライトアップされているはずだが、さすがにこの時間は照明が消されている。
向かいのホテルの明かりが、仄かに反射して少し気味が悪い。
『クロードは、優しいもん』
「蔵人」と、「優しさ」は水と油のようなものだと思う。どうしても混じり合うことは無い。
もし蔵人を優しいと感じたならば、その裏にある企みを探るべきだ。
『さっき、その優しい蔵人のせいで知らない男に陵辱されかけただろ』
『そうだけど……知り合った頃、私はただの使い捨てのダンサーだったの。クロードのクラブで、裸みたいな格好で踊って、女優目指して勉強してたの』
アリシアは、夢と現実を往き来するように小さな声で語る。
赤いドレス姿のまま連れてきてしまったので、さっきから寒そうに腕をさすっていた。
『……今思うと、客と揉め事を起こした、ただの日雇いダンサーの私の話を聞いてくれはのはクロードだけだった。
あんなに大きなクラブを経営して、部下がたくさんいるのに……クロードは、私の話を聞いてくれた。
その直後、酷い目に遭わされて、処女奪われたけど、惚れちゃった』
『頭イかれてるな』
『何よ。いい話でしょ?』