BLack†NOBLE



 電子キーでロックを解除すると、アリシアは自ら運転席に座った。


 ここの鉄柵のゲートは手動だ。俺に開けという意味だろう。

 鉄柵の重い門を開くと、アリシアがゆっくり車を発進させて門を潜ると道端に停車した。俺は門を閉じて施錠をした。


 運転席のアリシアに『代わろう』と提案すると『瑠威疲れてる』そう言われて、顎で助手席を示された。

 俺は無言で助手席のドアを開くと、そこに乗り込んだ。



『俺と一緒にいる必要なんてない、車を貸してくれれば修理して返す。ローザのマンションの住所を教えてくれ』


 考えてみればアリシアも、被害者だ。これ以上危険な目に遭う必要もない。危険がないのが一番だが……まずこの街の運転は、難しい。


『クロードと結婚したのがバレた時の話だけど……』

 それなのに、関係のない話をしながらアクセルをふかす。

 アリシアの運転は、先ず先ずの腕前のようだ。女がスポーツカーを乗りこなしているのだから、上手な部類だろうとは予測していたが狭い路地を100キロオーバーで走る度胸は認めよう。


『婚約届けを勝手に提出したのがバレた時だろ?』


 俺が言い替えると、アリシアは鼻をふんと鳴らした。

『うん、とにかくバレた時。クロードの屋敷に連れて来られたの。フランスにいたのに、目の前が真っ暗になって……気がついたらクロードの屋敷にいたのよ』


 すごいでしょ? と笑う神経はわからないが、それを魔法か何かのように誇らし気な口調だった。

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