BLack†NOBLE
ガタガタと揺れる石畳の道は、気を抜けば脳震盪を起こしそうになる。
この車のサスペンションは最高品質のもののはずなのだが、縦揺れが激しい。
ナポリでは路上は無法地帯だ、ルールがあるようで無い。
メーターは150を越えていても、小さな車が俺たちを追い抜いていく。一体何キロだしているのか知りたい。
アリシアは惑わされることなく両手でハンドルを握る。
『クロードの部屋に二人きりで……あっ、エッチな話じゃないよ? 期待してたらごめん』
『するか、変態馬鹿女』
ランボルギーニは、中心街に入る。アリシアはキャハハと笑いながら信号を無視した。近くにパトカーが停まっていたが、信号無視ごときに警察は動かない。
『クロードは、大きな書斎の机に頬杖ついてこう言ったの「遺書を書け」
その机には真っ白な紙と封筒、それから万年筆が一本置いてあったわ』
『よく生きてられたな?』
蔵人も、勝手に婚約届けを出した女をよく殺さなかったものだ。少し見直した。
常軌を逸脱したイタリア人の荒い運転に、目が慣れてきたところでアリシアは、また狭い路地にハンドルをきる。
後続車が数台いる。