BLack†NOBLE
『私の車、撃たれてスクラップされたみたいになってたの。酷いよね。でも、クロードが新しい車買ってくれるって』
アリシアは俺の隣に座った。アーモンドクリームの甘い香りと潮の香りが混ざり合う。
『ねえ、瑠威。なんでクロードはローザに会いに行くのに私も連れてきたんだろ? 今までいくら頼んでも絶対に連れてきてもらえなかったのに! それにローザが私より可愛かったらどうしよう……』
『煩い。そんなこと自分で考えろ馬鹿女』
顔を両手で覆う。どっちが可愛いかなんて、どうでもいい事だ。
『顔色真っ青だよ、大丈夫? 瑠威』
大丈夫じゃないから、顔色が真っ青なんだろ。気分は最悪だ、頭痛も続いているし、傷が痛む。心配で胸が張り裂けそうだ。
クルーザーは、旅路を急ぐように大きく揺れながら速度をあげていく。
スクリューが忙しく回転する。海水を弾く音と、エンジン音が耳障りだ。
蔵人は、焦っているのかもしれない────
何に?