BLack†NOBLE
12.dodici
────イヤホン式のトランシーバーを装着した門番が、胸元のマイクから『クロード様がいらっしゃいました』と呟いた。
そして小さく身を屈めて、蔵人の手に短いキスをする。
『何か変わったことはなかったか?』
『特にボスにお伝えするような変化はございません。シチリアに入った別組織は、すぐに島を出なくてはなりません』
『当然だ』
蔵人は大きく頷き歩き出す。
真っ白な塀に囲まれた、花園。黄色に赤にオレンジ、紫……手入れの行き届いた庭だ。
赤い煉瓦の道。その先に一人の女性が立っている。
『クロード……ああクロード、久しぶりね。顔をよく見せて?』
彼女は満面の笑みで蔵人に手を伸ばす。
ローザか……
蔵人は、その足元に両膝をつくと彼女を見上げた。
『ご無沙汰しております。お体の具合はいかがでしたか?』
ここのマフィアたちがそうするように、蔵人はローザの手を優しく両手で包むと……柔らかなキスを落とした。