BLack†NOBLE
「わかりました……モアイ像ですね? チリのイースター島ですと、ここから飛行機数時間です。日本から行くよりも近いのですが、帰りの事を考えると……地球を一周するようですね? お嬢様」
「えっ? モアイ像はイタリアにはないの?」
やはり、幼い段階で専門の家庭教師を雇うべきだった……
勉強嫌いな彼女を甘やかしてしまったのは、全て俺の責任だ。
酸味のきいたベリージャムを味わうと、小さなため息がでた。
「イタリアには、またいつでも来れますよ。今は、はやく日本に帰り……結婚へ向けて色々と準備を」
「ダメよ!」
俺の言葉を遮るように、強い口調で真剣な顔をするお嬢様。
「いったい何がしたいのですか?」
「柏原のお父様とお母様の事をもっと知りたいし、柏原がどんな所で育ったのかもしりたい」
「ですが……私の両親は既に……」
冷たい墓の中だ。
凄惨な自動車事故で、遺体はとても酷い状態だった。
「そうだけど……せめてお墓参りくらいさせて? 柏原も、私の過去と向き合わせてくれたじゃない」