BLack†NOBLE
マフィアには、『血の掟』と言われるものがある。それは『沈黙の掟』と『服従の掟』によって守られる。
例え相手が、最愛の恋人だろうと、実の兄弟だろうと掟を破ることは禁じられている。
「それは俺の口からは言えない。掟違反だ」
「ローザに訊けば教えてくれたかもな」
「デリカシーがないんだな……」
蔵人は何も考えなしに行動する男ではない。
「コッグとグレコには恨みがある。瑠威が泳いでくれたおかげで、いい収穫があった」
「死にかけたけどな」
「お前はあのくらいで死なないと思ってた。瑠威は頭がいい」
「嬉しくない」
正直、両親の死を悲しんだのは俺一人だと思っていた。ローザの話をきいて、六年を経てその考えは改めなおす事ができた。
ローザンヌ・メルフィスにも邪気のようなものは一切感じられない。深い湖底のような悲しみを両親と俺たちに抱えて生きている。