BLack†NOBLE
蔵人の横顔は、星空に照らされ青白く光っている。
もうこの話題はよそう。悲しくなるだけだ。それに蔵人はこれ以上何も話さない。
「アリシアって猿みたいな奴だな? 小さくてキーキーよく騒ぐ」
「ああ、言われてみればそうだ」
蔵人は笑みをもらすとグラニータのグラスを両手で掴んだ。
「あいつの、どこがいい?」
いわば……誘導尋問みたいなものだったのだが、蔵人の答えは早かった。
「アリシアは、いつも正しい。間違えて悪の歪みにはまってもアリシアを見ると『正義』の強さを思い出させる」
「マフィアに正義なんて必要ないだろ。それなら、もっと大切にしてやれよ」
苦笑しながら『また生意気なことを言うな』と悪態ついてから、真剣な顔をした。
「アリシアは存在してくれているだけで充分だ。傍においておきたいとは思わない」
それを『愛情』と呼ぶことを、蔵人は気づいていないのだろう。 かつての
俺と同じだな……蔵人にはじめて勝ったような気がした。
俺はもう気付いている。深みにはまって抜け出せなくなるほど人を愛すると、どうしていいのかわからずに、その存在だけが全てになる。