BLack†NOBLE
「それに、私はもう『お嬢様』じゃないわよ? 柏原のお嫁さんになるんだから
、茉莉果って呼んでよ」
ここへ来た目的は、この愛しく美しい彼女と婚約を誓う儀式をするためだ。
長年彼女の執事として仕えてきた。
純白のドレス、花嫁はまだあどけない。
「茉莉果か……照れくさいですね。しかし、まだ貴女はお嬢様だ。婚約をしても、戸籍上の正式な妻になるのは、まだ先の事でしょう」
「そうなの? 私、まだ奥さんになれないの?」
彼女が身を乗り出してきたので、不安定なゴンドラが揺れた。
「きゃ!」と悲鳴をあげて、彼女の細い体が俺の腕に飛び込んできた。
愛しくて、たまらない……
「焦らずとも、近い未来です。茉莉果」
抱き合った俺達を讃えるように、カンツォーネはクライマックスを迎える。
「柏原……」
「さあ、お嬢様。見えてきました。あそこが、サンマルコ寺院です」
ロマネスク・ビザンチン建築の最高傑作。サンマルコ寺院。
サンマルコ広場に隣接し、多くの観光客で賑わっている。