BLack†NOBLE
彼女の本当の両親も既に他界している。
内緒で墓を探し彼女を連れていったことがある。
どこか現実逃避癖のある彼女に、しっかりと現実に向き合わせたくてやったことだがそれで良かったと思っている。
だけどそんな心配はいらなかった。彼女は、亡き人をとても敬い大切にしているのだ。
あれから、本当の両親の慰霊碑に何度も繰り返し花を手向けに連れて行った。
心の中は、とても優しく清らかな方なのだ……
俺が、小さく頷くと
彼女は、「よかった」と手を叩く。
「両親の墓は、家族で暮らしていたフィレンツェにあります。ここから少し内陸に向かいますが、よろしいですか?」
「かまわないわ♪ お墓参りしたら、日本に帰りましょ。結婚披露パーティの準備をしないとね? 柏原」
紅茶のカップに、暖めたミルクを流し入れると、綺麗な円を描く。
ティースプーンでそれを遮ると、紅茶とミルクは混ざり合う。
綺麗なベージュ色をした紅茶は、俺たちの間で幸せそうに柔らかな湯気をあげていた。
俺は、彼女の申し出が嬉しかったのかもしれない。