BLack†NOBLE
「……柏原?」
「茉莉果お嬢様……」
彼女は眠そうに目を擦りながら、虚ろな瞳を二回まばたきさせた。
抱き締めたい。強く抱き締めて、壊してしまいたくなる。
「柏原……泣いてるの?」
「……いいえ、泣いてなどいません」
わざと冷たく答えた。二日ぶりの可愛らしい彼女と視線が合うと、反射的に目をそらしてしまった。
「大丈夫? 怪我をしたのかしら? お医者さんに見てもらったほうがいいわ!」
彼女は俺の酷い身なりに気がつくと、慌てて起き上がる。
「怪我はしていない」
「でも……」